カンティーナ・デル・カステッロ

中世の小さな町ソアーヴェの街道沿いに大切に守られてきた珠玉の建築群は、旅人たちに今も昔と変わらない姿を見せています。その脇の小道をゆくと、14世紀に建てられた由緒あるサンボニファチオ伯爵家の館が見えてきますが、カンティーナ・デル・カステッロはここに本社を置いています。社名の由来は、昔、この館が秘密の地下道でカステッロ・スカリージェロ(デッラ・スカラ家の城)とつながっていたという言い伝えによるものです。樹齢100年を超える松の緑が影を落とす広い前庭はコルテ・ピットーラと呼ばれ、この地に最初に居を構えたヴェローナの名家ピットーレにちなんで名づけられました。 城の中に入るとまず、完璧な幾何学的空間、幾つも続く部屋、精緻なアーキトレーヴ(石造の梁)、飾り棚や繰形など往時のままの室内装飾、典雅な調度品の数々に目を奪われます。さらに、階段を下りた先の中世の貯蔵庫では、当時の地下建築にじかに触れることができます。歴史の重みが感じられる雰囲気満点のこのスペースには、昔の葡萄栽培用の道具が残され、かたわらの棚には新旧さまざまなボトルが整然と並べられていますが、その多くは生産者の個人的な所蔵品です。 この魅力的で示唆に富んだ「王国」の主アルトゥーロ・ストッケッティは、ブドウ栽培とワイン醸造をいとなむ事業家でソアーヴェワイン保護協会の会長を務めており、熱気あふれる話しぶりには情熱的な彼の気性がよく表れています。舞台に立つ役者さながら、その豊かなバリトンの声は、部屋に入ってくる前から響き渡ります。 カンティーナ・デル・カステッロが生産する4銘柄のソアーヴェ・クラッシコのうち2銘柄は、カルニーガとプレッソーニというクリュで作られています。 かつてはボッラ家が所有していたカルニーガは、現在ソアーヴェ呼称地域の中でもとりわけ詩情にあふれるたたずまいを見せるブドウ畑の一つとなっています。それは単に、鋸型の狭間が際立つソアーヴェ城のシルエットを中心としたクラッシコ生産地域を見渡す景観の美しさによるものだけではありません。冬でも、日没の頃には、地平線から射す残光がこの地を文字どおり忘れがたいものとしてくれるのです。 ブドウ畑に植樹が行われたのは1998年のことでした。その広さは1.5ヘクタール弱、傾斜はごくわずかで、ほとんど平地に見えるほどです。標高150~180メートルの西向きの斜面に、グイヨ式垣根仕立てで栽培されています。土壌は火山性で、リンを豊富に含み、石灰岩質。あたり一帯にはソアーヴェのゼニアオイが咲き誇っています。 このブドウ畑でストッケッティが育てている品種はガルガーネガとトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェですが、それらのブドウからは、総じて比較的香りの少ない、しかしフルボディで長熟タイプのワインが生まれます。実際、カルニーガは、まだ若い間はやや「荒っぽさ」がみられますが、数年の瓶内熟成を経た後には見違えるほど魅力的となり、格段に香り高いワインとなることが珍しくありません。それは1995年物や1990年物のようなヴィンテージワインが証明するとおりです。収穫は10月半ば頃、醸造工程では伝統にもとづきステンレスタンク内で1年間のバトナージュが行われます。 カルニーガの畑でもっと遅い時期に収穫されるガルガーネガ種のブドウは、もう一つの重要な銘柄であるソアーヴェ・スペリオーレ・クラッシコ・アチニ・ソアーヴィにも用いられます。オーク樽で風味を高めるこのワインは、ミネラル感は少なめで、感覚的特性としてはトロピカルフルーツの香りが際立ちます。 それに対して、もう一つのクリュ、プレッソーニ(モンテ・プレッソーニ)は、モンテ・フォスカリーノの北東の斜面、モンテフォルテ・ダルポーネ地区にあります。広さは11ヘクタールにおよび、オリーヴの木々や自然に湧き出る泉に囲まれています。高低差のあるこの土地は火山性で、亜鉛、炭素、リンが豊富に含まれています。標高は280メートル。傾斜が強く、東側に面した斜面の勾配は15度あります。等高線に沿った帯状のブドウ畑が広がり、栽培には2つの仕立て方、ペルゴラ・ヴェロネーゼとグイヨ式垣根仕立てが用いられています。 ガルガーネガやトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェ種のブドウは10月前半に収穫され、カルニーガと同じ伝統的醸造法を採用していますが、カルニーガよりは短い4〜5か月ほどの期間、「シュール・リー法」による静置を行います。 プレッソーニもカルニーガと同様、若飲みにはあまり適していません。実際、ワイナリーから出したての頃は、無口で、閉じこもり気味のワインであり、まったく愛嬌がないうえに、いかめしいとまではいかなくとも、ひどく堅苦しい性格をしています。しかし、年を重ねるごとにほとんど奇跡的といえるほど気性が開放的となり、色とりどりのアロマに彩られた、複雑でゆたかな深みのある白ワインとなるのです。ゆたかな果肉を彷彿させる酸味のバランスがほどよくとれた2002年物や、高級リースリングに匹敵するような柑橘類、アーモンド、濡れた岩、ミネラルといった感覚的特性の構成を実現した1994年物がそれを証明しています。